海外旅行実務 出入国法令 「入管法」
出入国法令 「入管法」
この章では、日本人・外国人の国内や海外滞在時の出入国手続きについて、「入管法」にそって解説していきます。初めにこの項で使用されるポイントとなる用語をいくつか説明します。
入管法とは
正式名称を「出入国管理及び難民認定法」といい、本邦に入国し、または本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民の認定手続を整備することを目的とした法律。
用語の定義
旅券(パスポート) | ・国籍やその他の身分を証明するもの。 ・外務省が発行する。 |
査証(VISA、ビザ) | ・国外の日本大使館・領事館が発行する。 ・外務省の管轄 ・日本に入国することに支障がないことを証明(推薦)するもの。 ・入国を保証するものではない。 |
在留資格 | ・外国人が日本に住むために必要な資格 ※期間が決められているため、永住資格とは違う。 ①活動類型資格 ・職種などにより活動範囲に制限がある(海外でいう就労ビザ) ②地位等類型資格 ・日本人との結婚など |
永住権 | 外国人がその国の在留期間を制限されることなく、その国の一定の条件を満たすことにより、滞在国に永住できる権利。 |
特別永住者 | 通常の入管法ではなく「入管特例法(正式名称:日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)」によって規定されている特別な身分系在留資格。この在留資格は韓国人・朝鮮人・台湾人を中心とする、ごく限られた外国人のみが申請できる。 ・特別永住者の在留資格に有効期間はない。 ※特別永住者証明書には有効期間があるため、有効期間が切れる前に更新手続をしなければならない。 |
再入国許可 | 日本に中長期在留している外国人または特別永住者が、在留期間内に一時的に日本国外へ出国する場合、出国時に「再入国許可申請」をしなければならない。出国時に再入国の許可を申請することにより、再入国の際に国外(領事館など)で改めて査証(ビザ)を取得する必要がないという制度。 |
みなし再入国許可 | 日本に在留する外国人が急きょ本国に帰る用事ができた場合など、短期間で再び日本に入国するという場合、一定の条件を満たす外国人を対象に、煩雑な「再入国許可」の手続きを簡略化するためにできた制度。 |
ビザと在留資格の違い
- 「ビザ」は入国の際に必要な書類で、「在留資格」は日本に滞在するために必要な資格。
- 国外の大使館・領事館が「ビザ」を発行
- 外務省の管轄(発行)
- 滞在理由(職業、学業など)
※この時点では入国が保証されていない。
- 入国管理局が審査
- 法務省の管轄
- ビザの内容確認「上陸審査」(ビザの役目はここまで)
- ビザの内容に基づき「在留資格(活動類型資格 or 地位等類型資格」が発行される。
- 国外の大使館・領事館が「ビザ」を発行
再入国許可
再入国許可とは(通常)
日本に中長期在留している外国人または特別永住者が、在留期間内に一時的に日本国外へ出国した後に再度入国する場合、何も手続きを行わずに日本を出国すると、その人が持っていた在留資格や在留期間は消滅してしまいます。そのため、日本では入管法により、それらの外国人は出国時に「再入国許可申請」をしなければなりません。出国時に再入国の許可を申請することにより、再入国の際に国外(領事館など)で改めて査証(ビザ)を取得する必要がないという制度です。
- 日本出国前にあらかじめ行わなければならない。(例外:みなし再入国許可)
- 「再入国許可申請書」1通を地方入国管理局に出頭して提出する。
※地方入国管理局長が相当と認める場合、出頭しなくてもよい。 - 再び入国する意図の表明は、入国審査官に再び入国する意図を有する旨を記載した「再入国出国記録」を提出することによって行う。(出国前)
- 再入国許可を受けずに出国した場合、現在所持しいている在留資格や在留期間が失効してしまう。
※改めて出国先の領事館等で在留資格を取得しなければならない。
みなし再入国許可
みなし再入国許可とは(例外的、簡素化)
日本に在留する外国人が急きょ本国に帰る用事ができた場合など、短期間で再び日本に入国するという場合、一定の条件を満たす外国人を対象に、煩雑な「再入国許可」の手続きを簡略化するため、2017年7月にできた制度です。
1.特別永住者
- 特別永住者で有効な旅券及び特別永住者証明書を所持して、入国審査官に対し再入国する意図を表明して出国するときは、再入国の許可を受けたものとみなされる。(みなし再入国許可)
- 有効期間:出国の日から2年
2.中長期在留者
- 有効な旅券(難民旅行証明書を除く)と在留カードを所持するものが、法務省令で定めるところにより、入国審査官に対し再び入国する意図を表明して出国するときは、再入国の許可を受けたものとみなされる。(みなし再入国許可)
※再入国の許可を要する者として、法務省令で定めるものに該当する者は、出国前の再入国許可申請が必要。 - 有効期間:出国の日から1年
※在留期間の残りが1年未満の者は、その在留期間満了までの期間。
3.短期滞在の在留資格をもつ者
- 出国時に有効な旅券と指定旅客船で再び入国する意図を表明(帰りの航空券などを所持)して出国するとき、再入国の許可を受けたものとみなす。(みなし再入国許可)
- 出国の日から15日
※在留期間の残りがその日数以下の場合、その在留期間満了までの期間。
再入国の有効期間
再入国の有効期間は、1.「再入国許可(通常)」と2.「みなし再入国許可(例外)」の2つがあります。共に再入国の許可ということでは一緒ですが、その性質上、申請や有効期間に違いがあります。少々頭の中が混乱するかもしれませんが、きっちりと整理しましょう。
1.有効期間
- 再入国許可(通常)
- 5年(特別永住者以外の者)
- 6年(特別永住者)
※現在残っている在留期間内。
- みなし再入国許可
- 1年(中長期在留者)
- 2年(特別永住者)
- 15日(短期滞在の在留資保持者)
※現在残っている在留期間内。
2.有効期間の延長
- 再入国許可(通常)
- 1年(特別永住者以外の者)⇨合計6年を超えない範囲内
- 2年(特別永住者)⇨合計7年を超えない範囲内
- 災害や病気、やむを得ない事由で有効期間内に再入国できない場合など、日本国外(外国の領事館等)で再入国許可の有効期間の申請ができる。
※現在残っている在留期間内での延長が可能。
- みなし再入国許可
- 延長できない。(絶対にダメ!)
- 必ず1年以内(特別永住者は2年)に再入国しなければならない。
- 期間内に再入国できなかった場合、国外(領事館など)であらためて査証(ビザ)を取得しなければならない。
※簡易な制度のため、短期の出入国に関しては手続きが簡素化された反面、期間を過ぎてしまった場合の特例は許されず、在留資格を失う。
特別永住者
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より引用)
第2次世界大戦終戦前から引き続き居住している在日韓国人・朝鮮人・台湾人およびその子孫の在留資格。従来,これらの人の在留資格については複雑に分かれていたが,日韓法的地位協定に基づく協議が最終的に決着したのをうけ,1991年に「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」 (平成3年法律71号) が定められ,特別永住者として在留することになった。特別永住者については,再入国許可の有効期間の特例,退去強制事由の限定など出入国管理及び難民認定法の特例が認められている。