海外旅行実務 出入国法令 「通関法」
出入国法令 「通関手続に関する法令」
この項では、日本国内に持込まれるものや国外に持出すものなど、特に税関での申告が必要な「もの」について解説していきます。
出国時の持出し
出国時に国外へ持出すものとして以下のものがありますが、それぞれ申告方法に違いがあります。
1.現金
- 「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を税関に申告する。
- 現金、小切手、有価証券など、合計金額が100万円を超える場合
- 携帯する金の地金(純度90%以上)の重量が1㎏を超える場合
- 出入国時にそれぞれ税関への申告が必要。
2.外国製品
- 「外国製品持出し届」に持ち出す物の品名・数量・特徴などを記入し、出国の際に現品を添えて税関の確認を受ける。
※ブランドバッグや時計など、出国前に申請をしなかった場合、入国時に元々身に付けていたものと証明することができず、海外で購入したものとして関税がかけられていまう場合がある。
3.輸出免税品
- 購入した店から「輸出証明申請書」を受領し、出国の際に現品を添えて税関の確認を受ける。
4.輸出規制品
- 猟銃、鉄砲、刀剣類、超高性能パソコンなど
※事前に輸出の手続きが必要。
5.動植物
- 植物・動物検疫所で「輸出検疫証明書」の交付を受ける。
入国時の持込み
次に、国外から国内へ持ち込む場合をみていきましょう。持ち出すときと同様に、入国時に携帯品や別送品を税関に申告しなければなりません。
税関申告
テロの未然防止や密輸阻止、迅速で適正な通関を行うために、入国(帰国)時に「携帯品・別送品申告書」1通を提出する。(入国の際に空港で記入する黄色い縦長の紙)(旅具通関)
※別送品がある場合は2通。
旅具通関とは
入国時に携帯や別送を税関に申告する際、一定の範囲を定めて簡易な通関手続き(携帯品・別送品申告書の提出のみ)を認めるもの。一定の範囲を超えた場合、商業貨物と同様に一般通関扱いとなる。
別送品
入国(帰国)の際に携帯して持ち帰るものとは別に、引越荷物、旅先で不要になった身の回り品・土産品などを、渡航先から郵便や宅配便などを利用して送ったもの。
- 入国者本人を受取人として送ったもの。
- 別送品の申告手続は、入国時(税関を通過するとき)におこなう。
※入国後の申告手続きはできず、免税枠や簡易税率の適用を受けることができない。 - 「携帯品・別送品申告書」2通を税関に提出する。
- そのうち1通に税関が確認印を押して本人が保管する。
※確認印を押した申告書を紛失した場合の再発行はない。
- そのうち1通に税関が確認印を押して本人が保管する。
- 品物の外装、税関告知書(郵便物)、送り状などに必ず「別送品(Unaccompanied Baggage)」と明確に表示する。
※運送を請け負った配業者が気づかず、日本で「別送品」扱いしないまま輸入通関を終えてしまい、せっかくの旅免税枠を使えない状態になってしまうことがある。 - 原則として本人の帰国(入国)後、6ヶ月以内に通関できるものに限る。
- 受託手荷物が搭乗した航空便で届かなかった場合(紛失した場合)、その手荷物は「別送品」扱いとなる。
免税範囲
- 携帯品や別送品(帰国後6か月以内に輸入するものに限る)のうち、個人的に使用すると認められるもの。
- 免税範囲を超えた場合、物品の種類に応じた税率によって税金が課せられる。
- 6歳未満の子供が使用するおもちゃなど、明らかに本人が使用していると認められるもの。
- 酒類・タバコ・香水以外の物品の「海外市価」の合計額が20万円を超える場合には、20万円以内におさまる品物が免税になる。
- 酒類・タバコ・香水は数量により免税範囲が決まっている(従量免税)
※以下の表を参照
- 酒類・タバコ・香水は数量により免税範囲が決まっている(従量免税)
- 1品目ごとの「海外市価」が1万円以下の場合、免税対象となる。
※この場合、免税範囲の20万円に含まれない。 - 未成年の輸入物品は、個人的に使用するものと認められるものに限り、成年者1人と同等の免税範囲が適用される。
※酒類、タバコは適用されない。(託送品・家族への贈与品と認められた場合、課税して持ち込むことができる)
※託送品とは、本人以外を受取人とする物品のこと。 - 旅行中に必要なもの(衣類、化粧品など)や、職業上使用するもの(楽器、工具など)は無条件で免税となる。(無条件免税)
免税には、価格によって決まるものや、数量によって決まるもの(従量免税)などがあります。
従量免税
酒類・たばこ・香水の免税範囲 「従量免税」 | |||
品名 | 数量・価格 | 備考 | |
酒類 | 3本 | 1本約760mlのもの | |
たばこ | 紙巻タバコのみ | 200本 | |
加熱式タバコのみ | 個装等10個 | 1箱あたりの数量は、紙巻たばこ20本に相当する量 | |
葉巻タバコのみ | 50本 | ||
その他 | 250g | ||
香水 | 2オンス | 1オンスは約28ml(オーデコロン、オードトワレは含まれない) | |
その他 | その他 | 20万円「海外市価」の合計額 | 合計額が20万円を超える場合 ・20万円以内におさまる品物が免税になり、その残りの品物に課税される。 ・1個で20万円を超える品物は、その全額について課税される。 ※旅行者の有利になるように、免税となる品目を選択して課税する。 |
海外市価と課税価格
旅行者の携帯品や別送品は、ある一定の範囲内であれば免税となりますが、超えた場合は課税対象となります。その場合、課税額を算出するために使うのが「海外市価」と「課税価格」です。
1.海外市価
- 海外での通常の小売価格のこと。
2.課税価格
- 一般の輸入取引の場合の輸入港での価格をいい、携帯品や別送品として持ち込まれるお土産等については、海外での小売価格「海外市価」の6割程度の額としており、税関では、この「海外市価」をベースに税額を決定している。
ex.海外で10万円で購入した場合、海外市価の6割(6万円)が課税価格になる。
税率の種類
免税範囲を超えた場合、携帯品や別送品として持ち込まれる物品に適用される税率は、大きく分けると以下の3つになります。
-
- 「簡易税率」:関税・内国消費税等を含んだ形で適用する。
- 「一般の関税率」:関税の他に消費税・地方消費税が含まれる。
- 「関税無税品」:関税がかからなく、消費税(10%、うち地方消費税2.2%)のみが課税される。
1.簡易税率
品名 | 税率 | |
酒類 | ①ウイスキー及びブランデー | 800円/リットル |
②ラム、ジン、ウォッカ | 500円/リットル | |
③リキュール | 400円/リットル | |
④焼酎(蒸留酒) | 300円/リットル | |
⑤その他(ワイン、ビールなど) | 200円/リットル | |
たばこ | 紙巻たばこ | 15円/本 |
加熱式たばこ | 葉たばこスティック 主な製品例:アイコス、グローなど |
15円/本 |
葉たばこリキッド 主な製品例:プルーム・テックなど |
50円/個 | |
その他の物品 (衣類、ハンドバック、指輪など) ※関税がかからないもの除く。 |
15% |
※香水、口紅、マニキュアなど、WTO加盟国からの持込みは、簡易税率がかからず(関税無税品)、消費税および地方消費税が課税される。
2.一般の関税率
- 1個(1組)の課税価格が10万円を超えるもの。
- 米
- 食用の海苔、パイナップル製品、こんにゃく芋、紙巻たばこ以外のたばこ、猟銃
- 簡易税率の適用を希望しない旨を税関に申し出たときは、旅行者が携帯品や別送品の全部(全てを一般税率にする)
3.関税無税品
以下は、関税がかからず、消費税のみが課税される。(10%、うち地方消費税2.2%)
- 腕時計、貴金属製の万年筆、貴石(裸石)、ゴルフクラブ、書画、彫刻、 パソコン、
- 香水、口紅など(WTO加盟国からの持込品に限る)
税額の計算方法
1.従量税方式
- 容量・数量を基準に計算する方式(タバコ、お酒)
- 計算額の100円未満は切り捨て
ex.
ウォッカ(760ml)1本分が課税される場合
・760mlは0.76リットル、ウォッカ1リットルにかかる税率は500円
上記の条件より
・0.76リットル ✕ 500円
=380円
100円未満は切り捨てにより、300円が課税される。
2.従価税方式
- 価格を基準に計算する方式(衣類、バッグ、貴金属など)
ex.
ハンドバッグ(12万円)1個が課税される場合
①海外市価12万円の課税価格
・120,000円 ✕ 0.6(海外市価の6割)
=72,000円
②課税価格にその他の物品の税率15%をかける
・72,000円 ✕ 15%
=10,800円が課税される。
3.関税無税品(消費税+地方消費税)
- 関税等のかからない無税品に適用される。(腕時計、ゴルフクラブ、パソコンなど)
- 消費税10%(うち消費税7.8%、地方消費税2.2%)で計算
ex.
腕時計(15万円)1個が課税される場合
①海外市価15万円の課税価格
・150,000円 ✕ 0.6(海外市価の6割)
=90,000円
②課税価格に消費税率(7.8%)をかける
・90,000円 ✕ 7.8%(0.078)
=7,020円(切り捨てにより)消費税額は7,000円
③消費税額から地方消費税額を計算する
・7,000円(消費税額)✕ 22/78(22は地方消費税2.2%、78は消費税7.8%のこと)
7,000円×22÷78
≒1,974(切り捨てにより)地方消費税額は1,900円
④消費税額と地方消費税額の合計額
7,000円(消費税)+ 1,900円(地方消費税)
=8,900円が課税される。
輸入規制品
- ワシントン条約で規制対象となっている動植物、加工品など
※「検疫法」のページを参照 - 検疫対象となっている動植物、食品など
※「検疫法」のページを参照 - 医薬品、化粧品など
- 旅行者本人が使用するのもに限り、一定の範囲で輸入が認められる。
- 猟銃、刀剣、(刃渡15㎝以上)、空気銃など
- 事前に公安委員会の所持許可等が必要
- 輸入貿易管理令で規制されているもの(海苔など)
医薬品・化粧品の個人輸入範囲
- 医薬品・医薬部外品:2ヵ月分まで(毒薬、劇薬および処方箋薬は1ヶ月分まで)
- 外用薬:標準サイズで1品目につき24個以内(処方箋医薬品を除く)
- 化粧品:標準サイズで1品目につき24個以内
- 医療機器(家庭用):1セット
輸入禁止品(税関ホームページ)
- 覚醒剤、大麻、向精神薬、麻薬、あへん、MDMA、指定薬物(医療等の用途に供するために輸入するものを除く)などの不正薬物
- 拳銃等の銃砲、これらの銃砲弾、拳銃部品
- 爆発物、火薬類、化学兵器原材料、炭疽菌などの病原体など
- 貨幣、紙幣、有価証券、クレジットカードなどの偽造品など
- わいせつ雑誌、わいせつDVD、児童ポルノなど偽ブランド品、海賊版などの知的財産を侵害する物品
- 家畜伝染病予防法、植物防疫法、外来生物法などで輸入が禁止されているもの
(税関ホームページ)
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