海外旅行実務 出入国法令 「検疫法」




出入国法令 「検疫法」

出入国の際、海外へ持ち込んだり持ち帰ったりするものについて、検疫法という法律を中心にいろんな法律が登場します。主に「植物・動物」と「人間」に分けてみていきましょう。

検疫法

国内に常在しない感染症の病原体が船舶または航空機を介在して国内に侵入することを防止するとともに、船舶または航空機に関して、その他の感染症の予防に必要な措置を講ずる法律
(厚生労働省ホームページ

 

検疫には「植物検疫」と「動物検疫」の2つがあります。それぞれの検疫について学習していきましょう。

植物検疫

植物防疫法「輸入禁止品」

「何人も、次に掲げる物を輸入してはならない。ただし、試験研究の用その他農林水産省令で定める特別の用に供するため農林水産大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。」
植物防疫法7条)

  • 農林水産省令で定める地域から発送され、または当該地域を経由した植物で、農林水産省令で定めるもの。
  • 検疫有害動植物
  • または土の付着する植物
  • 上記の物を入れた容器・包装
検疫対象となるもの
  • 生果実ドライフラワー切花、野菜、穀物、豆類、切花、切枝、苗木、種子、球根など
検疫対象とならないもの
  • アルコール、亜硫酸、酢酸、砂糖、塩などに漬けられた植物
    • キムチ、ピクルス、漬物
  • キノコ類
    • 松茸、トリュフ
      土の付着がないもの
  • 製茶類
    • 紅茶、烏龍茶、高麗人参茶、鉄観音茶
  • 乾果(ドライフルーツ
    • パイナップル、マンゴー、柿
  • 香辛料
    • 小さく密閉された容器に入っているもの。

 

動物検疫

家畜伝染病予防法

動物の病気の侵入を防止するため、また家畜の伝染性疾病(寄生虫病を含む)の発生を予防し、まん延を防止することにより、畜産の振興を図ることを目的とした法律。
家畜伝染病予防法、農林水産省動物検疫所ホームページ

検疫対象となるもの
  • 牛、豚、やぎ、ひつじ、馬、鶏、犬、だちょう、七面鳥、うずら、あひる・がちょうなどのかも目(もく)の鳥類、うさぎ、みつばちなど
    ※骨、臓器、肉を含む。
  • ハム、ベーコン、ソーセージ、ビーフジャーキー、肉まんなど
    ※上記1を原料とするもの。
    はちみつは検疫の対象外。(蜂自体が含まれていなければ大丈夫)
検疫対象とならないもの
  • 魚介類
    • スモークサーモン、ロブスター
      ※ワシントン条約、外来生物法の制限がないもの。
  • 乳製品
    • バター、チーズ
  • 皮製品、羽製品
    ※ワシントン条約の制限がないもの。

 

狂犬病

犬の登録(犬の生涯に1回)と、狂犬病予防注射(毎年1回)は、狂犬病予防法で定められた義務です。

狂犬病予防法

「この法律は、狂犬病の発生を予防し、そのまん延を防止し、及びこれを撲滅することにより、公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ること。」(第1条)
(農林水産省動物検疫所ホームページ

検疫対象動物
  • 犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンクなど

 

輸入禁止品

  • 麻薬類:覚醒剤、大麻など
  • 銃砲類
  • 火薬、爆発物、病原体(炭疽菌など)
  • 偽造品:貨幣、クレジットカード、コピーブランド商品
  • わいせつ物
  • 特定外来生物

特定外来生物

近年、外来種による日本国内の在来種が甚大な被害を受けています。一部の心無い人が外来種のペットを捨てたり、一部個人の楽しみのために、他人の迷惑を顧みず、ブラックバスやブルーギルなどの特定外来種を湖に放流したりすることが主な原因です。

外来生物法

特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること。
そのために、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行う。
外来生物法、環境省ホームページ

代表的な特定外来生物
  • モクズガニ(上海蟹)、コクチバス(ブラックバス)、ブルーギル、ミシシッピアカミミガメ、アメリカザリガニなど

 

輸入規制品

  • ワシントン条約
  • 医薬品・化粧品
  • 水産加工品:海苔、こんぶなど
  • フォアグラ
    • 現在、日本は加熱していない家禽肉などの輸入を認めていない。
      ※家禽肉(かきんにく)とは、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等の鶏類の肉のこと。

 

ワシントン条約

「絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」といい、1973年、ワシントンで採択されたことから通称「ワシントン条約」といわれています。この条約は、国際取引によって生存を脅かされている、または絶滅してしまう恐れのある野生動植物を保護することを目的とした条約で、日本をはじめ世界の約170カ国が加盟しています。(日本は1980年批准)

1.持込禁止
    • インド象、アフリカ象、漢方薬など
2.許可が必要
    • ワニ、ニシキヘビ(皮を使った二胡、胡弓)
    • キャビア(チョウザメの卵)
      • ワシントン条約により規定されているラベルが貼られている場合、1人250gまで持込むことができる。(例外)

ワシントン条約(税関ホームページ

 

身体に対する検疫

身体に対する検疫については、厚生労働省が行う水際対策として、指定された地域からの渡航者に対し「質問票」の提出などによって行われる。

主な感染症(抜粋)
  • 一類感染症:エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、ペスト、ラッサ熱
  • 二類感染症:鳥インフルエンザ
  • 四類感染症:デング熱、チクングニア熱、マラリア
    ※コロナウイルスは五類(2023年5月~)

 

確認テスト

確認テスト 海外旅行実務「検疫法」
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第4章 海外旅行実務 目次

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