宿泊約款 モデル宿泊約款




モデル宿泊約款

これまで旅行業約款、運送約款と学習してきました。最後は宿泊約款について学習していきます。旅行や仕事でホテルや旅館を利用することがあると思いますが、皆さんの実体験を重ね合わせながら学ぶとより現実味があって面白いかもしれません。

 

適用範囲

  • 約款に定めのない事項については、法令又は一般に確立された慣習によるものとする。
  • 法令及び慣習に反しない範囲で特約に応じたときは、その特約が優先するものとする。

 

宿泊契約の申込み

宿泊の申込み方法です。現在は、宿泊アプリなどで予約することがほとんどですが、モデル宿泊約款では以下のように規定されています。

  • 宿泊契約の申し込みをしようとする者は、以下の事項をホテル(旅館)に申し出る。
    • 宿泊者名
    • 宿泊日及び到着予定時刻
    • 宿泊料金
    • その他、宿泊施設が必要と認める事項
  • 宿泊客が、宿泊中に当初の宿泊日を超えて宿泊の継続を申し入れた場合。
    • 申し出がなされた時点で新たな宿泊契約の申し込みがあったものとして処理する。(連続した宿泊にならない)
      ex.<当初の契約>1日目⇨2日目 延長の申込 <新しい契約>3日目⇨4日目

 

宿泊契約の成立

宿泊の申込みがあり、ホテル(旅館)が申込みを承諾したときに宿泊契約が成立します。以下に契約成立の流れを記しましたが、現在の宿泊契約と随分かけ離れているような気がします。

  • 宿泊契約が成立したときは、宿泊期間(3日を超えるときは3日間)の基本宿泊料を限度として当館が定める申込金を、宿泊先が指定する日までに支払う。
  • 申込金は以下の順に充当する。
    • ①宿泊料金⇨②違約金⇨③賠償金⇨④返還
    • ①宿泊客が最終的に支払うべき宿泊料金に充当する。
    • ②宿泊客がその責めに帰すべき事由により宿泊契約の全部または一部を解除した場合は、違約金に充当する。
    • ③宿泊客が損害賠償を負う事態が生じたときは、賠償金に充当する。
    • ④残額があれば、料金の支払いの際に返還する。
  • 宿泊客が指定した日までに申込金を支払わない場合。
    • 宿泊契約はその効力を失う。(原則)
    • 契約の成立後、申込金の支払いを要しないこととする特約に応じることがある。
    • 宿泊契約の申し込みを承諾するに当たり、申込金の支払いを求めなかった場合や申込金の支払期日を指定しなかった場合は、特約に応じたものとして取り扱う。

 

宿泊の登録(チェックイン)

  • 宿泊客は、宿泊日当日、フロントにおいて、次の事項を登録しなければならない。
    • 宿泊客の氏名、年令、性別、住所及び職業
    • 外国人にあっては、国籍、旅券番号、入国地及び入国年月日
    • 出発日及び出発予定時刻
    • その他当館が必要と認める事項
  • 宿泊客が料金の支払いを旅行小切手、宿泊券、クレジットカード等、通貨に代わり得る方法により行おうとするときは、登録時(チェックイン時)にそれらを呈示する。

 

宿泊契約締結の拒否

ホテルや旅館は以下の事由により、宿泊契約に応じない場合があります。

  • 宿泊の申込みが、この約款によらないとき。
  • 満室(員)により客室の余裕がないとき。
  • 宿泊しようとする者が、宿泊に関し、法令の規定、公の秩序もしくは善良の風俗に反する行為をするおそれがあると認められるとき。
  • 宿泊しようとする者が、暴力団、暴力団員、暴力関係団体であるとき。
  • 宿泊しようとする者が、他の宿泊客に著しい迷惑を及ぼす言動をしたとき。
  • 宿泊しようとする者が、伝染病者であると明らかに認められるとき。
  • 宿泊に関し暴力的な行為または合理的な範囲を超える負担を求められたとき。
  • 宿泊しようとする者が、他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれがあるとき。
  • 天災施設の故障、その他やむを得ない事由により宿泊させることができないとき。
  • 都道府県の規定する条例に該当するとき。

 

契約解除権

契約の解除です。宿泊客と宿泊業者、双方の契約解除権についてみていきましょう。

宿泊客の契約解除権
  • 宿泊客は、いつでも宿泊契約を解除することができる。
  • 宿泊客が宿泊契約の全部または一部を解除した場合は、違約金を支払う。(申込金が違約金になる)
    • 申込金の支払期日が指定されている場合で、その期日後に契約を解除したときは違約金を支払う。
    • 宿泊客が宿泊契約を解除したとき、宿泊先が宿泊客に違約金の告知したときに限り支払う。
    • 申込金の支払期日より前に宿泊客が宿泊契約を解除したときは違約金を支払わない。
  • 契約日数が短縮した場合は、その短縮日数にかかわりなく、1日分(解除された初日)の違約金(宿泊料金)を支払う。
  • 団体客(15名以上)の一部について契約の解除(宿泊人数の変更)があった場合、宿泊の10日前(その日以降に申込んだ場合にはその申込んだ日)における宿泊人数の10%(端数は切上げ)にあたる人数については、違約金は発生しない
  • 宿泊客からの連絡がなく、あらかじめ到着予定時刻が明示されている時刻を経過しても到着しないときは、その宿泊契約は宿泊客により解除されたものとみなし処理することがある。(払戻しナシ)
宿泊業者からの契約解除権

以下の事由により宿泊先が宿泊契約を解除したときは、宿泊客がいまだ提供を受けていない宿泊サービス等の料金は収受しません

  • 宿泊に関し、法令の規定、公の秩序もしくは善良の風俗に反する行為をするおそれがあると認められるとき、または同行為をしたと認められるとき。
  • 暴力団、暴力団員、暴力関係団体であるとき。
  • 宿泊客が他の宿泊客に著しい迷惑を及ぼす言動をしたとき。
  • 伝染病者であると明らかに認められるとき。
  • 宿泊に関し暴力的要求や合理的な範囲を超える負担を求められたとき。
  • 天災等不可抗力に起因する事由により宿泊させることができないとき。
  • 都道府県の規定する条例に該当するとき。
  • 寝室での寝たばこ、消防用設備等に対するいたずら、その他当館が定める利用規則の禁止事項(火災予防上必要なものに限る)に従わないとき。

 

客室の使用時間

チェックアウト時間に遅れると、追加料金を支払わなければならない場合があります。ホテルや旅館によって決まりは違いますが、モデル宿泊約款を例に、客室の使用時間と追加料金について解説します。

  • 宿泊客が客室を使用できる時間は、午後***時から翌朝***時までとする。(宿泊先の規定による)ただし、連続して宿泊(連泊)する場合は、到着日及び出発日を除き、終日使用することができる。
  • 前項の規定に定める時間外で客室を使用する場合、以下に追加料金を支払う。
    • 超過3時間まで:室料金の1/3
    • 超過6時間まで:室料金の1/2
    • 超過6時間以上:室料金の全額
  • 室料相当額は、基本宿泊料(次の表参照)の70%とする。

 

宿泊料金の内訳

  内訳
宿泊料金 基本宿泊料(室料+食事)②サービス料
追加料金 ③追加飲食(セットの食事以外の飲食料など) ④サービス料
税金 消費税、入湯税(温泉地)など
  • 宿泊客に客室を提供し、使用が可能になったのち、宿泊客が任意に宿泊しなかった場合、宿泊料金を支払わなければならない。
  • 子供料金は小学生以下に適用し、大人料金に対して以下の%が適用される。
    • 大人に準じる食事と寝具を提供したとき:70%
    • 子供用食事と寝具を提供したとき:50%
    • 寝具のみを提供したとき:30%
      ※寝具、食事を提供しない幼児については、宿泊先が幼児料金を設置する旅館の規定した金額を収受する。

 

客室の提供ができない時の取扱い

旅行業約款で「オーバーブッキング」について解説しましたが、設備の故障やオーバーブッキングにより、客室が提供できなくなる場合があります。

  • 宿泊客に契約した客室を提供できない事由が発生
    ⇨宿泊客の了解を得て、できる限り同一の条件による他の宿泊施設を斡旋する。
  • 他の宿泊施設の斡旋ができないとき。
    ⇨違約金相当額の補償料を宿泊客に支払い、その補償料は損害賠償額に充当する。(その後、損害賠償が発生した場合、補償料は損害賠償金の一部となる。)
    ※客室が提供できないことについて責めに帰すべき事由がないとき(天災など)は、補償料を支払わない。(他の宿泊施設を斡旋できなくても支払わない)

 

寄託物等の取扱い

ホテルや旅館にチェックインした後、財布や貴重品をフロントに預ける場合がありますが、保管をお願いする者を「寄託者」といい、預けるものを「寄託物」といいます。宿泊客が館内に持ち込んだ貴重品の扱いについては、「預けていたか」「自分で持っていたか」によって責任範囲や賠償額が違います。

  • 宿泊客がフロントに預けた物品または現金並びに貴重品
    • 滅失毀損等の損害が生じたときは、それが不可抗力である場合を除き、宿泊先はその損害を賠償する。
    • 現金及び貴重品については、種類および価額の明告を求めた場合に宿泊客がそれを行わなかったときは、宿泊先が定める金額を限度としてその損害を賠償する。
  • 館内に持込んだ物品または現金並びに貴重品(フロントに預けなかった
    • 宿泊先の故意または過失により滅失、毀損等の損害が生じたときは、その損害を賠償する。
    • 宿泊客からあらかじめ種類及び価額の明告のなかったもの(持ち込んだことを知らせていない)については、故意または重大な過失がある場合を除き、宿泊先の定める金額をを限度としてその損害を賠償する。

 

手荷物または携帯品の保管

宿泊に先立って、ホテルや旅館に荷物を送ることがあります。また、チェックアウト時に、うっかり客室やロビーに荷物を忘れてしまうこともあります。それらの荷物について、宿泊先はどのように対処するのでしょうか。

  • 宿泊客の手荷物が、宿泊に先立って到着した場合。
    • 事前に了解したときに限って責任をもって保管し、宿泊客がフロントにおいてチェックインする際に渡す。(客室に前もって運ぶ)
  • チェックアウト後、宿泊客の手荷物または携帯品が当館に置き忘れられていた場合。
    • 所有者が判明したときは、当該所有者に連絡をするとともにその指示を求める。
    • 所有者の指示がない場合または所有者が判明しないときは、発見日を含め7日間保管し、その後最寄りの警察署に届ける

 

駐車場を利用する場合

最後に、宿泊先の駐車場を利用するときの規定です。車を大事に乗っている方は特に気になるところではないでしょうか。宿泊先によっては、自分で駐車する場合と係員が入り口で預かる場合があります。

  • 車両のキーの寄託(預かり)の如何にかかわらず、車両の管理責任は負わない
    ※キーをフロントで預けただけでは宿泊先の管理責任は問われない。ただし、駐車場の管理に当たり故意または過失によって損害を与えたときは、その賠償の責めを負う。

    ex.ホテル入口で車を預かり従業員が駐車場まで移動する際にぶつけた。

 

確認テスト

確認テスト 宿泊約款 モデル宿泊約款」
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第2章「約款」目次

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