旅行業約款 手配旅行契約「契約の解除」




 

契約の解除について解説していきます。企画旅行契約(募集型・受注型)と手配旅行契約の大きな違いは、旅行業者からの旅行開始後の解除がないというところです。前項の「契約の成立」で解説したように、旅行業者は「旅行サービスの手配」が完了した時点で旅行債務が終了(契約完了)しますので、その後、旅行者の旅行中に契約を解除するということがないということです。

 

「旅行者からの解除」と「旅行業者からの解除」についてみていきます。企画旅行契約「契約の解除」の表を使ってパターンを整理してみましょう。

取消人 取消時期
旅行者 1.旅行開始前
2.旅行開始後
旅行業者 3.旅行開始前
4.旅行開始後

募集型・受注型企画旅行契約では4つのパターンがありましたが、手配旅行契約では「旅程管理業務」がないことから、旅行業者の「4.旅行開始後の契約の解除」はありません。

旅行業者からの旅行開始後の解除権がないということは、 旅行開始後の補償(変更補償、特別補償)の必要もないということです。

 

では、上記の3つのパターンを解説していきましょう。

旅行者からの解除
時期 内容 旅行者の負担
1.旅行開始前 1.旅行者の責に帰すべき事由による解除(自己都合も含む) ・提供を受けていないサービスの取消料・違約料
・取消手数料
・旅行業務取扱料金
上記の金額が「旅行代金」から差し引かれ、残りの金額が払い戻される。
2.旅行業者の責めに帰すべき事由 なし
・全額払戻される
※損害賠償請求もできる。
2.旅行開始後 1.旅行者の責に帰すべき事由による解除(自己都合も含む) ・既にサービスを受けた部分の費用
・提供を受けていないサービスの取消料・違約料
・取消手数料
・旅行業務取扱料金
上記の金額が「旅行代金」差し引かれ、残りの金額が払い戻される。
2.旅行業者の責めに帰する事由 ・既にサービスを受けた部分の費用のみ(運送費・宿泊費など)が「旅行代金」から差し引かれる
※損害賠償請求もできる。

 

旅行業者からの解除
3.旅行開始前
以下の事項が発生した場合、旅行業者は契約を解除する。
1.旅行者が所定の期日までに旅行代金を支払わないとき
2.旅行者が旅行代金等に係る債務の一部または全部を提携会社のカード会員規約に従って決済できなくなったとき
旅行業者が契約を解除した場合、旅行者は以下の費用を負担しなければならない。
・既に手配が完了しているサービス機関への取消料・違約料(運送・宿泊機関などへ)
・取消手数料(旅行業者へ)
旅行業務取扱料金(旅行業者へ)

 

手配旅行契約の「契約の解除」は、文章だけで説明すると非常に混乱しますので、実際に出題された問題をみてみましょう。

過去問

次の手配旅行契約において、旅行者が(1)及び(2)のそれぞれの状況で契約を解除した場合に、旅行業者が当該旅行者に払い戻すべき金額の組合せのうち、正しいものはどれか。
(旅行代金はいずれも全額収受済とする。)
・旅行サービスに係る運送・宿泊機関等に支払う費用 120,000円
・旅行業務取扱料金(変更手続料金及び取消手続料金を除く。) 10,000円
・取消手続料金 10,000円
・旅行者がすでに提供を受けた旅行サービスの対価 50,000円
・旅行者がいまだ提供を受けていない旅行サービスに係る運送・宿泊機関等に支払う取消料・違約料 30,000円
(1) 旅行業者の責に帰すべき事由により、旅行者が旅行開始後に契約を解除した場合
(旅行業者に対する損害賠償の請求は考慮しないものとする。)
(2) 旅行者の都合で、旅行者が旅行開始後に契約を解除した場合
(1)の場合の払戻し額 (2)の場合の払戻し額
a. 80,000円 30,000円
b. 80,000円 20,000円
c. 70,000円 30,000円
d. 70,000円 20,000円

 

それでは、この問題を使って解説していきます。

「旅行代金」とは
・旅行業者が旅行サービスを手配するために、運賃、宿泊料その他の運送・宿泊機関等に対して支払う費用と旅行業者所定の旅行業務取扱料金(変更手続料金及び取消手続料金を除く)の合計額

 

ここで「旅行代金」の解釈を間違えてしまうと、全て終わってしまいますので、十分に注意してください。この問題でいうとこうなります。

・旅行サービスに係る運送・宿泊機関等に支払う費用 120,000円
・旅行業務取扱料金(変更手続料金及び取消手続料金を除く。) 10,000円

合計 130,000円が「旅行代金」となります。この数字を基に問題を解いていきます。

それでは問題(1)。

(1) 旅行業者の責に帰すべき事由により、旅行者が旅行開始後に契約を解除した場合
(旅行業者に対する損害賠償の請求は考慮しないものとする。)

「旅行業者の責めに帰すべき事由」と「旅行開始後に解除」が条件となっているので、上の表「2.旅行開始後、2.旅行業者の責めに帰する事由」を見てみると、以下の費用が差し引かれることになります。

①既にサービスを受けた部分の費用のみ(運送費・宿泊費など)

問題と照らし合わせると、

・旅行者がすでに提供を受けた旅行サービスの対価: 50,000円

「旅行代金」130,000円-50,000円=80,000円    答え:80,000円が払い戻される。

次に問題(2)。

(2) 旅行者の都合で、旅行者が旅行開始後に契約を解除した場合

「旅行者の都合」と「旅行開始後に旅行者が解除」が条件となっているので、上の表「2.旅行開始後、1.旅行者の責に帰すべき事由による解除(自己都合も含む)」を見てみると、以下の費用が差し引かれることになります。

①すでにサービスを受けた部分の費用
②提供を受けていないサービスの取消料・違約料
③取消手数料
旅行業務取扱料金

上記と照らし合わせると、

・すでにサービスを受けた部分の費用:50,000円
・提供を受けていないサービスの取消料・違約料:30,000円
・取消手数料:10,000円
・旅行業務取扱料金:10,000円

この合計金額を「旅行代金」から差し引いた額が払戻し額になります。

「旅行代金」130,000円-(50,000円-30,000円-10,000円-10,000円)=30,000円
答え:30,000円が払い戻される。

よって、(1)(2)それぞれの答えは80.000円と30.000円になり、選択肢aが答えとなります。

正解:a

 

文字だけの説明ですと非常に分かりずらいですが、問題に当てはめるとかなり理解もしやすくなると思います。何となくモヤモヤする箇所と言えば「旅行業務取扱料金」が「旅行代金」にも含まれていて、解除の時に更に差し引かれるので、何となく二重に取られている感覚があるかもしれませんが、旅行業者が解除作業に費やした労力への対価ということなのでしょう。出題のパターンになれてしまえば難しい問題ではありませんので、確実に得点しましょう。

確認テスト 目次

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