「契約の解除」も「契約の締結」「契約の変更」と同様に、「旅行者」「旅行業者等」の双方からすることが可能ですが、その「解除時期」と「取消料」が重要なポイントになります。
- 誰が解除するのか
- いつ解除するのか
- 旅行者は取消料を払う必要があるか
- 旅行業者は取消料を収受できるのか
取消人 | 取消時期 |
旅行者 | 1.旅行開始前 |
2.旅行開始後 | |
旅行業者 | 3.旅行開始前 |
4.旅行開始後 |
旅行者は、自己都合により取消料(キャンセル料)を支払うことにより、いつでも旅行契約を解除することができます。
それでは、上の表の1~4の条件に沿って解説していきます。
1. 旅行開始前(旅行者)
自己都合
「旅行開始日の前日から起算して遡って✕✕日目に当たる日以降に解除する場合」という規定のもとに取消料が発生します。
ex. 旅行開始日が7月1日の場合
例えば、7日目に当たる日以降とは、前日(30日)を1日目として起算(起点)して遡って「29日が2日目・・・24日が7日目」となるので、24日~29日までが期間(30%)となる(以降はその日も含む)
国内旅行(キャンセル料)
20日目に当たる日以降 | 6月11日~6月25日 | 旅行代金の20%以内 |
10日目に当たる日以降(日帰り) | 6月21日~6月25日 | 旅行代金の20%以内 |
7日目に当たる日以降 | 6月24日~6月29日 | 旅行代金の30%以内 |
前日 | 6月30日 | 旅行代金の40%以内 |
当日(開始前) | 7月1日 | 旅行代金の50%以内 |
開始後(不参加) | 7月1日 | 旅行代金の100%以内 |
海外旅行(キャンセル料)
40日目に当たる日以降(ピーク時) | 5月22日~6月28日 | 旅行代金の10%以内 |
30日目に当たる日以降 | 6月1日~6月28日 | 旅行代金の20%以内 |
前々日~当日 | 6日29日~7月1日 | 旅行代金の50%以内 |
開始後(不参加) | 7月1日 | 旅行代金の100%以内 |

以下もまた、旅行者からの旅行開始前の契約解除に該当します(自己都合)。旅行者は、申込書を申込料金とともに提出した時点で契約が成立します。(募集型企画旅行契約「契約の締結」)その後、旅行業者は速やかに契約書面を交付しますが、旅行者は、その契約書面に記載された期日までに旅行代金をを支払わなければなりません。
期日までに支払わなかった場合
- 期日の翌日に旅行者が契約を解除したとみなされる(みなし解除)
- 取消料に相当する額の違約料を支払わなくてはならない
- 申込時に支払った申込金が違約料になる
※期日までに支払ったとき、申込金は旅行代金の一部となる

旅行者は、いつでも所定の取消料を旅行業者に支払って企画旅行契約を解除することができるのが大原則ですが、旅行者からの契約解除でも取消料を支払わなくても良い場合があります。
取消料が発生しない場合
- 契約内容の重要な変更があったとき(契約書面に記載された内容の変更)
※「重要な変更」とは、後の項で学習する募集型企画旅行契約「責任・旅程保証」の変更保証金の項目と同じ - 旅行代金の変更(著しい経済情勢の変化等)
- 旅行の安全かつ円滑な実施が不可能(天災地変、暴動、戦争など)
- 確定書面の未交付(契約書面に記載された期日までに交付されなかった)
- 旅行業者の責めに帰すべき事由により、契約書面通りの旅行の実施が不可能になったとき(宿泊・運送機関への手配ミスなど)
2. 旅行開始後(旅行者)

旅行開始後に旅行者が契約を解除する場合、その解除する事由と責任の所在(旅行者・旅行業者)により取消料やその他の料金の支払いが決まります。
旅行者の責めに帰すべき事由
- 払戻額から取消料、違約料、既に支払いまたはこれから支払わなければならない費用(オプションツアーのアトラクションの入場券など)を差し引いたものを旅行者に払戻す
旅行業者の責めに帰すべき事由
- 取消料を収受せず、その後の旅行サービスの提供を受けられなくなった部分の契約にかかる代金を旅行者に払戻す
3. 旅行開始前(旅行業者)
旅行業者から旅行開始前に契約の解除をする場合、取消料は収受できません。以下の事由が発生した場合、旅行者に理由を説明して、旅行開始前に企画旅行の契約を解除することができます。ただし、取消料は収受できません。
- 旅行に参加する資格を満たしていないことが判明したとき
- 病気、必要な介助者の不在その他の事由で、旅行に耐えられないと認められたとき
- 他の旅行者に迷惑を及ぼし、または団体旅行の円滑な実施を妨げる恐れがあると認められるとき
- 旅行者が合理的な範囲を超える負担を求めたとき
- 最少催行人数に達しなかったとき
※旅行者への通知期限あり(下の表参照) - 自然条件(スキー場の降雪量、ご来光ツアーの天気など)が伴う旅行実施条件で、契約で明示した内容を達成できない恐れが極めて大きいとき
- 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等のサービス中止、官公署の命令など、旅行業者の関与し得ない事由が発生した場合で、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能、またはその恐れが極めて大きいとき
- 通信契約で、クレジットカードが無効になるなど、債務の一部または全部が決済できなったとき
- 「暴力団排除条項」に該当することが判明したとき
最少催行人数に達しなかったとき
最少催行人数に達しないために企画旅行契約を解除する場合、以下のような通知期限があります。
ex. 旅行開始日が8月5日の場合
例えば、「3日目に当たる日より前」とは、8月4日(前日)を1日目として起算(起点)して遡って「3日が2日目・・・2日が3日目」となり、3日目に当たる日が8月2日、それより前の8月1日までに通知しなければならない
海外旅行(ピーク期) | 33日目に当たる日より前 | 7月1日 |
海外旅行(通常) | 23日目に当たる日より前 | 7月11日 |
国内旅行(宿泊) | 13日目に当たる日より前 | 7月21日 |
国内旅行(日帰り) | 3日目に当たる日より前 | 8月1日 |
前日 | 8月4日 | |
旅行開始 | 8月5日 |
4. 旅行開始後(旅行業者)

旅行業者が旅行開始後に契約を解除する場合、どのようなときに旅行業者が契約を解除するのか、またその際に旅行者へ支払う旅行代金はどのようになるのでしょうか。
旅行業者は、旅行開始後であっても旅行者に理由を説明して、契約の一部(これからの旅程)を解除することができます。
※理由を説明するのであり、旅行者の承諾は必要ない。
- 旅行者の病気、必要な介護者の不在その他の事由で、旅行が継続できないとき
※同行する添乗員の病気による業務の遂行不可能は、契約の解除事由にならない(業務を遂行できないからと言って、その後の旅行を終わらせることはできない) - 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等のサービス中止、官公署の命令など、旅行業者の関与し得ない事由が発生した場合で、旅行の継続が不可能となったとき
- 添乗員その他の者による旅行業者の指示への違背、これらの者または同行する他の旅行業者に対する暴行または脅迫等により、団体行動の規律を乱し、当該旅行の安全かつ円滑な実施を妨げるとき
- 「暴力団排除条項」に該当することが判明したとき(判明しても平穏に旅行している場合は問題ナシ)
上記の理由でやむを得ず旅行が解除された場合、すでに提供を受けたサービスは有効な弁済がなされたものとして、これからの契約(日程)は将来に向かって消滅する(契約が解除された時点以降の旅程は無かったものとする)
- 旅行業者は、払戻しの額から取消料(違約料)その他既に支払い、またはこれから支払わなければならない費用を差し引いて旅行者に払戻す
ex.宿泊する予定だったホテルのキャンセル料、購入済みのアトラクションの入場券、切符の払い戻し手数料など
帰路手配

上記の1と2の理由で旅行業者が旅行開始後の旅程の契約を解除した場合、旅行業者は旅行者の希望に対し、出発地に戻るための必要な手配をしなければなりません。
- 病気、必要な介護者の不在その他の事由で、旅行が継続できないとき
- 天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等のサービス中止、官公署の命令など、旅行業者の関与し得ない事由が発生した場合で、旅行の継続が不可能となったとき
- 旅行者が希望した場合に対応する
- 費用のすべては旅行者が負担する
上の表3.4の項目は帰路手配の条件に入っていませんが、そもそもこれらの行為によって契約の解除を行うということは最終手段であり、その後のサービスを提供できるはずがないためです。
払戻しの時期
契約の解除により払い戻される旅行代金の払戻しの時期は「旅行に行った、行ってない」です。
旅行に行ってない(旅行開始前) | 契約解除の翌日から起算して7日以内 |
旅行に行った ・旅行開始前の減額 ・旅行開始後の解除 | 契約書面に記載した旅行終了日の翌日から起算して30日以内 |
- 通信契約が解除された場合:提携会社のカード会員規約に従い払い戻す
- 払戻しの規定は、損害賠償請求権を行使することを妨げない
※払戻しと損害賠償は話が別であるので、当然に「旅行者」「旅行業者」双方から損害賠償請を請求することができる。