国内旅行実務 JR運賃・料金「運賃(運賃計算)」


運賃・料金の「運賃」について解説していきます。前項「総則」の基本用語とも照らし合わせながらみていきましょう。大変重要な部分ですので、しっかり時間をかけて理屈を理解しながら学習をすすめましょう。

運賃とは

出発地から目的地までの支払う対価で、その区間の距離を基準に設定されている金額。(普通列車も新幹線も運賃は同じ)

運賃計算の基本3パターン

運賃計算には以下の3パターンがあります。

  1. 幹線のみの乗車の場合
  2. 地方交通線のみの乗車の場合
  3. 幹線と地方交通線を連続乗車する場合

前項「総則」の復習になりますが、「幹線」「地方交通線」「営業キロ」「換算キロ」「擬制キロ」「運賃計算キロ」など、今後たくさんの専門用語が出てきますので、意味をしっかりと覚えていきましょう。

幹線主要な地域を結ぶ路線(時刻表は赤色
地方交通線地方を結ぶ路線(時刻表は青色
営業キロJR各社が運賃計算に使用しているほぼ実際の距離
換算キロ営業キロに約1割を増した距離(本州3社とJR北海道が利用)
ex.営業キロ120キロ⇨換算キロ132キロ
擬制キロ営業キロに約1割を増した距離(JR四国とJR九州が利用)
※換算キロと言い方が違うだけで、意味は換算キロと同じ。
ex.営業キロ120キロ⇨擬制キロ132キロ
運賃計算キロ幹線と地方交通線を通しで乗車するときの距離で、幹線の営業キロと地方交通線の換算キロ(または擬制キロ)を合計した距離

1. 幹線のみの乗車の場合

  • 営業キロで計算する
    ex. 東京⇨名古屋 営業キロ:361.3km⇨362km(合計距離の端数は切り上げ

2. 地方交通線のみの乗車の場合

  • JR本州3社(東日本、東海、西日本)・JR北海道:営業キロで計算する
    ex. A(地方交通線)⇨ B(地方交通線)⇨ C (営業キロ+営業キロ)
  • JR四国・JR九州擬制キロで計算する
    ex. A(地方交通線)⇨ B(地方交通線)⇨ C (擬制キロ+擬制キロ)

3. 幹線と地方交通線を連続乗車する場合

  • 幹線営業キロ)+地方交通線(換算キロ、擬制キロ)の合計で計算する(運賃計算キロ
    ※営業キロと換算キロ(擬制キロ)の合計した距離を運賃計算キロという。

境界駅


上記の運賃計算の基本3パターンを踏まえて、JR本州3社(東日本、東海、西日本)とJR北海道、JR四国、JR九州をまたがって乗車する場合の運賃計算についてみていきましょう。JR各社の境界駅は以下のとおりです。

JR東日本とJR北海道新青森駅
JR西日本とJR四国児島駅(こじま)
JR西日本(在来線)とJR九州(在来線下関
JR西日本(新幹線)とJR九州(新幹線or在来線)博多
JR西日本(新幹線)とJR九州(在来線)小倉

※山陽新幹線がJR九州小倉駅と博多駅まで乗り入れているため、新幹線の境界駅は2つ存在する。

JR各社をまたがって乗車する場合


本州3社(東日本、東海、西日本)とJR3島(北海道、四国、九州)をまたがって乗車する場合の運賃の計算方法をみていきましょう。

  1. 基準額を計算する
  2. 加算額を計算する
  3. 基準額と加算額の合計が運賃となる

1. 基準額の計算方法

  1. 基準額とは、出発駅から到着駅までの全区間(通しの区間)から算出された金額
  2. JR本州3社の普通運賃表を使用する

ex. 郡山(JR東日本)⇨新青森(JR北海道)⇨室蘭通しの区間

  • 全区間が幹線なので、JR東日本とJR北海道の営業キロを合算する(端数は切り上げ)
  • JR本州3社の普通運賃表より、基準額を算出する

2. 加算額の計算方法

  1. 加算額とは、境界駅からそれぞれJR北海道・JR四国・JR九州の区間の営業キロまたは運賃計算キロから算出された金額
  2. 各社の加算額表を使用する

ex.郡山 (JR東日本)⇨ 新青森(JR北海道)⇨ 室蘭 (新青森−室蘭間)

  • JR北海道内は全区間が幹線なJRので、営業キロを使用する
  • JR北海道の加算額表より、加算額を算出する

「基準額」も「加算額」も幹線や地方交通線のまたがりによって営業キロを使ったり換算キロ・擬制キロを使ったりと、計算方法が変わります。運賃計算の基本3パターン「運賃の計算方法」のルールをしっかりと覚えましょう。※JR北海道は、「幹線のみ」「地方交通線のみ」のどちらも「営業キロ」を使用するので、結果的に、加算額は全て営業キロで計算します。

連続運賃計算


連続乗車について、いろいろなパターンを紹介します。

  1. 「乗車区間が1周してさらに超える場合」
  2. 「乗車区間の一部が重なる(往復する)場合」

運賃計算において営業キロ、換算キロまたは運賃計算キロは、「1周となる駅」または「重なる駅」で打ち切って計算するというルールがあります。

1. 乗車区間が途中で一周する場合

  • ABCDEB間とBA間の2区間連続乗車券を発行する

2. 乗車区間の途中で往復する場合

  • ABC間とCBD間の2区間連続乗車券を発行する

通過連絡運輸


路線を乗り継ぐ場合、JR線以外の路線を乗り継いで目的地へ向かうことがあります。

JR区間と他社の路線を乗り継ぐことを通過連絡運輸といいます。通過連絡運輸になるには、JR各社により通過連絡運輸の適用を受けていなければなりません。代表的な連絡会社線には「伊勢鉄道」「えちごトキめき鉄道」「IRいしかわ鉄道」などがあります。

A(JR線①)⇨ B(連絡運輸扱い会社線)⇨ C(JR線②)⇨ D

  • JR運賃+連絡会社線の運賃で計算する(JR線の運賃(①+②)+ 連絡運輸扱い会社線)

運賃計算の特例


運賃計算の特例について以下にまとめました。「特定都区市内制度」は運賃計算の試験問題で多く出題されるので、適用条件をしっかりと覚えましょう。

1. 特定特区市内制度

  1. 東京23区を含めた11の大都市(政令指定都市内)にあるJR線の駅を発着する場合、実際に発着する駅ではなくその中心駅を起点(終点)として運賃を計算する制度をいう
  2. その中心駅から営業キロ200kmを超ていること(201km以上)
  3. 特定都区市内にある駅で途中下車はできない
特例都区市内(カッコ内は中心駅)

東京都区内、札幌市内(札幌駅)、仙台市内(仙台駅)、横浜市内(横浜駅)、名古屋市内(名古屋駅)、京都市内(京都駅)、大阪市内(大阪駅)、神戸市内(神戸駅)、広島市(広島駅)、北九州市内(小倉駅)、福岡市内(博多駅)

日暮里−名古屋間は336km+5.7km=341.7km⇨342kmであるが、東京駅−名古屋駅間の営業キロが200㎞を超えているため、東京駅-日暮里駅間の営業キロは加算されず、336㎞が運賃となる。
切符には「東京都区内-名古屋」と表記される。

 

特定都区市内制度の適用外

以下の場合、特定都区市内制度は適用されません。

  1. 特定都区市内の外に出た後、再び同じ特定都区市内通過するとき
  2. 特定都区市内の外に出た後、再び同じ特定都区市内の駅着駅とするとき

2. 東京山手線発着

  1. 東京山手線内に属する駅から発着する場合で、片道の営業キロ100kmを超え200kmまでの駅(101kmから200km)の運賃は、中心駅を起点(終点)として運賃を計算する
  2. 山手線内にある駅で途中下車はできない
  3. 中央総武線「御茶ノ水~千駄ヶ谷」も山手線内に含まれる

品川駅−那須塩原駅間は157.8km+6.8km=164.6km⇨165kmとなるはずであるが、東京駅‐那須塩原駅間の営業キロが100㎞を超え200kmまでの間であるため、東京駅-品川駅間の営業キロは加算されず、158㎞が運賃となる。
切符には「東京山手線内-那須塩原」と表記される。

3. 区間乗車券

  •  乗車している列車が乗換駅に停車せず、そのまま折り返す場合、折り返し区間のキロ数は加算されない

東室蘭から特急すずらんに乗車し、札幌で普通列車に乗り換えて江別まで乗車する場合、白石−札幌間の折り返し区間のキロ数(5.8km)を含めず、東室蘭−白石間(123.4km)と白石−江別間(15.2km)の営業キロの合計138.6kmで運賃を計算する。
※札幌で途中下車はできない。(途中下車する場合は、白石−札幌間の運賃を別途支払わなければならない)

4. 経路特定区間

  1. どちらの経路を乗車しても目的駅に着くことができる場合、短い経路(安い経路)を使用して運賃計算する
  2. 実際に使用したルートが長い経路であっても、短い経路で計算した運賃が適用される
  3. 片道101km以上であれば、どちらの経路を乗車しても途中下車ができる
  4. この特例は料金にも適用される

赤羽−大宮間で、京浜東北線の川口・浦和を経由する17.1kmと、戸田公園・与野本町を経由する18.0kmの2通りがある。経路特定区間は、短い方の経路を使用するので、17.1kmで計算される。

5. 新幹線と在来線が並行する区間

  1. 新幹線と在来線が並行する区間は、原則、同一の路線として扱う(同じ運賃)。
    • 新幹線、在来線のどちらを使っても、その区間の運賃は同じ
  2. 新幹線と並行する在来線
    •  東海道・山陽新幹線:東海道本線・山陽本線・鹿児島本線
    •  九州新幹線:鹿児島本線
    •  西九州新幹線:長崎本線(諫早から長崎)
    •  東北新幹線:東北本線
    • 上越新幹線:東北本線・高崎線・上越線・信越本線

例外

この原則に当てはまらない区間(例外)は以下の通りです。

東海道・山陽新幹線と在来線品川~小田原、三島~静岡、名古屋~米原、新大阪~西明石、福山~三原、三原~広島、広島~徳山
九州新幹線と在来線博多~久留米、筑後船小屋~熊本、
東北新幹線と在来線福島~仙台、仙台~一関、一関~北上、北上~盛岡
上越新幹線と在来線熊谷~高崎、高崎~越後湯沢、長岡~新潟

6. 東京付近の特定区間

  1. 東京付近の特定区間(山手線内とその周辺)通過する場合、実際に乗車する経路に関わらず、最短経路で運賃を計算する
  2. 片道101km以上であれば途中下車ができる
    ex. 小田原−東京間を東海道線、東京−新宿間を中央線、新宿−松本間を特急「あずさ」を利用して小田原−松本間を乗車した場合。
    乗車距離は小田原−東京−新宿−松本の320kmになるが、最短経路で運賃を計算するため、この場合は「小田原−品川−新宿−松本の313km」で運賃を計算する。

東京周辺にはいろんなルートがあります。

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