旅行業約款 特別補償規程「種類」




募集型企画旅行契約「責任・旅程保証」の冒頭で、「損害賠償」「旅程保証」「特別補償」その特性と関連性について解説をしましたが、この項では、「特別補償」を中心に、詳しく解説していきます。

特別補償とは
企画旅行に参加する旅行者が、その企画旅行参加中に急激かつ偶然な外来の事故によって身体に傷害を被ったときに、旅行業者の責任が生ずるか否かを問わず、その生命、身体または手荷物の上に被った一定の損害について、あらかじめ定める額の補償金及び見舞金を支払うこと

 

特別保証金には4つの種類があり、それぞれ支払いに関する規定があります。

特別保証金の種類
1.死亡補償金 事故の日から180日以内に死亡した場合(旅行者の法定相続人に支払う)
2.後遺障害補償金 事故の日から180日以内に後遺障害が生じた場合
3.入院見舞金 平常の業務に従事すること、または平常の生活ができなくなり、かつ、入院した場合(1日の入院から
4.通院見舞金 平常の業務に従事すること、または平常の生活ができなくなり、かつ、通院した場合(3日以上の通院から

 

初めに「死亡補償金」、「後遺障害補償金」の2つについてみていきましょう。

1.死亡補償金
旅行で傷害を被ったことが直接の原因として、事故の日から180日以内に死亡した場合に支払われる。
・旅行者の法定相続人に支払われる
1.死亡の推定
・行方不明、遭難して30日を経過しても発見されない場合は、行方不明になった日、遭難した日に死亡したものと推定する(航空機が墜落、登山で遭難)
2.補償金額
・海外旅行:2.500万円
・国内旅行:1.500万円
2.後遺障害補償金
旅行で傷害を被ったことが直接の原因として、事故の日から180日以内に後遺障害が生じた場合に支払われる。
1.後遺障害
・傷害(ケガ、外傷など)が治ったあとも、機能の重大な障害が回復出来ない状況が続くことや、身体の一部が欠損すること
・事故の日から180日を超えてなお治療を要する状態にあるときは、181日目の医師の診断で後遺障害の程度を認定して、後遺障害補償金を支払う
※後遺障害補償金は、事故の日から180日以内に治療が終了してもなお回復が見込めない後遺症が残ったり身体の一部が欠損したときに支払われる補償金であるが、181日目になっても治療が引き続き行われている場合は、このように対応する。
2.補償金額
死亡補償金を基に、以下の表の割合を乗じた金額が、後遺障害補償金となる(一部抜粋)
・両目が失明した 100%
・片耳の聴力を完全に失った 30%
・片足(片腕)の機能に障害が残った 5%
・片方の母指(親指)の機能に著しい障害が残った 15%
例)海外旅行中に事故に遭い、片足の機能に障害が残った場合
2.500万円 ✕ 5% = 125万円が後遺障害補償金として支払われる
※上限は、海外旅行は2.500万円、国内旅行は1.500万円

 

次に2つの見舞金「入院見舞金」と「通院見舞金」についてみていきましょう。

3.入院見舞金
平常の業務に従事すること、または平常の生活ができなくなり、かつ、入院した場合、以下の表に記した区分に従って支払われる。
1日の入院から支払われる
見舞金額
入院日数 見舞金(国内)
180日以上 40万円(20万円)
90日以上180日未満 20万円(10万円)
7日以上90日未満 10万円(5万円)
7日未満 4万円(2万円)
例外
実際に入院しない場合も、医師の治療を受けたときは(その状況にある期間)は、入院日数とみなされることがある。
例)後遺障害補償金が支払われる内容の治療(視力・聴力の低下、神経障害など)
4.通院見舞金
平常の業務に従事すること、または平常の生活ができなくなり、かつ、通院した場合に支払われる。
3日以上の通院から支払われる
いかなる場合も、事故の日から180日を経過した後の通院に対しては、通院見舞金は支払われない
見舞金額
通院日数 見舞金額(国内)
90日以上180日未満 10万円(5万円)
7日以上90日未満 5万円(2万5千円)
3日以上7日未満 2万円(1万円)
例外
傷害を被ったために仕事日常生活に著しい障害があると旅行業者が認めた場合、その期間は通院日数とみなされることがある。
例)コルセット、ギブス、松葉杖などの使用など

 

募集型企画旅行契約「責任・旅程保証」で説明した「損害賠償」と「特別補償」の関連性、また「死亡・後遺障害補償金」と「入院・通院見舞金」の関連性をみていきましょう。組み合わせはこのようになります。

損害賠償金・補償金・見舞金の関連性
1.損害賠償金と補償金(死亡、後遺障害)
2.死亡補償金と後遺障害補償金
3.補償金(死亡、後遺障害)と見舞金(入院、通院)
4.入院見舞金と通院見舞金

 

それでは、それぞれの組み合わせをみていきましょう。

1.損害賠償金と補償金(死亡・後遺障害)
旅行業者に故意・過失がある場合、損害賠償責任が発生する。
・補償金の金額は、損害賠償の金額により決まる(両方の合計額が支払われるわけではない)

①補償金より損害賠償額が多い場合

海外旅行中に旅行者が死亡(旅行業者の過失)
・損害賠償金:4.000万円
・死亡補償金:2.500万円

損害賠償金の4.000万円が支払い額になり、内訳は、損害賠償金が1.500万円、補償金が2.500万円となる。

②補償金より損害賠償が少ない場合

海外旅行中に旅行者が死亡(旅行業者の過失)
・損害賠償金:1.500万円
・死亡補償金:2.500万円

補償金の2.500万円が支払い額になり、内訳は、損害賠償額が1.500万円、補償金が1.000万円となる。

2.死亡補償金と後遺障害補償金
死亡補償金と後遺障害補償金が重複した場合、死亡補償金(2.500万円、1.500万円)が限度額となる。
例)海外旅行で事故に遭い、後遺障害補償金を受取った旅行者が、その後死亡した。
・既に後遺障害補償金を750万円受取っていた場合、その後死亡した場合は、2.500万円から750万円を差し引いた額、1.750円が支払われる。 合計2.500万円
3.補償金(死亡・後遺障害)と見舞金(入院・通院)
補償金(死亡、後遺障害)と見舞金(入院、通院) が重複した場合、その合計額が支払われる。
例)海外旅行で傷害を負い、帰国後10日間入院したが、その後死亡した。
・入院見舞金:10万円
・死亡補償金:2.500万円  合計2.510万円
4.入院見舞金と通院見舞金
「通院日数」と「入院日数」で大きいほうの額が支払われる。

例1)海外旅行で身体に傷害を被り、旅行終了後7日間入院した後、3日間通院した。

  入院見舞金 通院見舞金
7日以上90日未満 10万円 5万円

①通院日数の算出方法:
「入院した日数」+「通院した日数」の日数を全通院日数とする
7日(入院)+ 3日(通院)= 全通院日数は10日間
②入院日数:7日間
「通院日数」と「入院日数」の見舞金を上記の表でみると、
・通院日数10日間の通院見舞金:5万円
・入院日数7日間の入院見舞金:10万円
よって、金額が大きい「入院見舞金」の10万円が支払われる。

例2)海外旅行で身体に傷害を被り、旅行終了後5日間入院した後、2日間通院した。

  入院見舞金 通院見舞金
7日未満(通院は3日以上) 4万円 2万円
7日以上90日未満 10万円 5万円

①通院日数
5日(入院)+ 2日(通院)= 全通院日数は7日間
2.入院日数:5日間
「通院日数」と「入院日数」の見舞金を上記の表でみると、
・通院日数7日間の通院見舞金:5万円
・入院日数5日間の入院見舞金:4万円
よって、金額が大きい「通院見舞金」の5万円が支払われる。

 

このように「損害賠償金」「補償金」「見舞金」の組み合わせをみてきましたが、まとめるとこのようになります。

損害賠償金・補償金・見舞金の関連性
1.損害賠償金と補償金(死亡、後遺障害) 損害賠償の金額により決まる
2.死亡補償金と後遺障害補償金 死亡補償金(2.500万円、1.500万円)が限度額となる
3.補償金(死亡、後遺障害)と見舞金(入院、通院) 重複した場合、合計金額が支払われる
4.入院見舞金と通院見舞金 大きいほうの額が支払われる

確認テスト 目次

error:
タイトルとURLをコピーしました