旅行業約款 募集型企画旅行契約「責任・旅程保証」




「旅行中にケガをした」、「盗難にあった」、「航空機から列車に変更になった」、「移動中にスーツケースを紛失した」など、旅行には想定外の事故に遇ったり変更を余儀なくされる場合があります。この予期しない事態にについて、誰がどの様なときにどの様な責任を負わなければならないのか、詳しく見ていきましょう。

責任とは
責任とは、金銭を支払うことにより負うこと(損害賠償

損害賠償は金銭を支払うことで責任を負うことになりますが、支払う内容は以下の2つに分かれます。
1.損害が手荷物に生じた場合
2.損害が手荷物以外に生じた場合(旅行者

損害賠償
手荷物 手荷物以外(旅行者)
旅行業者、手配代行者の故意または過失があること
手荷物のみ 手荷物以外
・身体への損害
・宿泊・運送機関の予約漏れなど
損害が発生した日の翌日から起算した日以内に旅行者が通知する
・国内:14日以内
・海外:21日以内
損害が発生した日の翌日から起算して2年以内に、旅行者が通知する
1名につき15万円を限度とする
※故意または重大な過失の場合は、この限度は適用されない(無制限
賠償額の制限なし

 

旅行業者またはその手配代行者の関与し得ない事由により旅行が中止され、または旅程が変更になった場合、損害賠償の責任を負いません。

損害賠償を負わない場合
・天災地変、戦乱、暴動
・運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止
・官公署の命令

 

旅行業者やその手配業者と同様に、旅行者にも旅行契約に関しての義務や責任があり、損害賠償責任が発生する場合があります。

旅行者の義務・責任
1.旅行者の故意・過失で旅行業者に損害を与えたときは、損害賠償の責任が発生する
2.契約の内容を理解するように努める
・契約後に問題が発生しないように、契約の際はしっかりと契約内容を確認する
3.旅行開始後に契約書面と違うサービスを受けたと思ったときは、旅行地(その場)で速やかに申し出る
・旅行業者、手配代行者、旅行サービス提供者に申し出る

 

損害賠償(責任)について解説してきましたが、金銭の支払いについては、損害賠償の他に「特別補償」「旅程補償」があります。これら3つの責任がどのような状況の時に支払義務を生ずるのか、3つの関連性についてみていきましょう。

3つの責任
1.損害賠償
・旅行業者または手配業者の故意または過失により旅行者が被害を受けたとき
2.特別補償
・旅行業者に故意または過失がない場合でも、旅行者が一定の損害を受けたとき(旅行業者が介入している旅行保険で補填している)
3.旅程保証(変更補償金)
・旅行日程や旅行サービス内容が契約書面と異なる内容で提供されたとき
(債務不履行として、旅行者が損害を受けたか否かにかかわらず、変更保証金を支払わなければならない)

 

初めに、損害賠償と旅程保証の関係ですが、この2つは重複して支払われることはありません。

損害賠償と旅程保証
重要な契約内容の変更について旅行業者の故意・過失の有無 損害賠償 旅程保証
(変更補償金)
ある
ない
※損害賠償と旅程保証は重複して支払われない
※旅程補償が支払われた後に旅行業者の故意または過失であることが判明した場合、旅行者は変更補償金を返還し、旅行業者は損害賠償金を支払う。(実際は変更補償金と損害賠償金を相殺した差額を支払う)

 

「特別補償」については次項の旅行業約款「特別補償規定」で詳しく説明しますが、損害賠償と特別補償は重複して支払われることがあります。

損害賠償と特別補償
旅行業者の故意・過失の有無 損害賠償 特別補償
ある
ない
※損害賠償と特別補償は重複して支払われることがある。
※特別補償は、旅行業者の故意・過失に関係なく、一定の条件で支払われる。

 

前の項、募集型企画旅行契約「契約の解除」 1.旅行者からの解除(旅行開始前)」で重要な契約内容が変更されたときに、取消料を支払うことなく契約を解除できるとありましたが、この重要な内容変更の項目が「変更保証金」として払われる項目ですので、以下の9項目をしっかり覚えましょう。

変更補償金が支払われるまでの流れ
↓契約書面(確定書面)の交付
↓重要な契約内容が変更される
旅行終了後に変更保証金の受取り
※「旅行開始前」に契約を解除した場合は、変更補償金は支払われない(旅行者は、取消料を支払うことなく、旅行契約を解除することができる)

 

「変更保証金」は、「契約書面」に記載された内容に重要な変更がなされた場合、旅行終了後に支払われますが、支払われる額の計算方法(%)は、契約書面の内容が変更された時期(旅行開始前or開始後)により異なります。(開始後は開始前の2倍)

変更保証金が支払われる重要な変更項目(9項目) 開始前
前日まで
(%)
開始後
当日
(%)
1.旅行日程(開始日、終了日) 1.5 3.0
2.観光地、観光施設の変更(美術館、レストランなど)
※レストランのランクが上がった場合でも、変更補償金が支払われる。
1.0 2.0
3.運送機関の等級や設備の変更(指定席⇨普通席)
※契約書面に記載した合計額より下回った場合に限る。
1.0 2.0
4.運送機関の種類、会社の変更(飛行機⇨電車、JAL ⇨ ジェットスター)
※等級(グレード)や設備がより良いものに変更された場合は適用されない
1.0 2.0
5.国内(本邦内)の旅行開始地または終了地の変更
(成田発JAL便 ⇨ 羽田発JAL便)
1.0 2.0
6.国内(本邦内)と国外(本邦外)の直行便が乗継(経由)便に変更
・成田~シカゴ ⇨ 成田~LA~シカゴ
※国内のみの乗継には適用されない。
・関空~LA ⇨ 関空~成田~LA
1.0 2.0
7.宿泊施設の変更、客室のグレード変更(Aホテル ⇨ B旅館)
グレードの高低に関係なく、変更補償金が支払われる。
1.0 2.0
8.宿泊施設の客室、設備、景観、条件の変更(スイート、風呂トイレ共同、オーシャンビュー、禁煙室など) 1.0 2.0
9.前項目の変更で、契約書面のツアータイトルに記載があった事項の変更(ツアータイトルの変更になった内容が、1から8の内容の変更に入っている場合)
例)
・A先生と行く大連旅順の旅 ⇨ B先生と行く大連旅順の旅
(重要な変更にならない:A先生とB先生の変更が1から8の項目の変更対象になっていない)
・Aレストランで楽しむツアー ⇨ Bレストランで楽しむツアー
(重要な変更になる:「2.観光地、観光施設の変更」にあたる)
2.5 5.0
※上記の9項目が運送・宿泊期間等のオーバーブッキングによるものである場合、変更補償金の支払いが発生する。

 

契約内容に重要な変更がなされた場合であっても、変更補償金が支払われない場合があります。

変更補償金が支払われない場合
1.天災地変、戦乱、暴動、官公署の命令などによる契約内容の変更
※天災地変とは、台風や落雷などの自然現象のこと。
2.運送・宿泊機関のサービス提供の中止
完全に中止になることが条件
※一部の客室や座席などが使用できないために不足が生じた場合は、変更補償金が支払われる。
3.運送計画の変更(天災地変による遅延、天候不良による目的地の変更など)
4.旅行参加者の生命または身体の安全確保のための必要な措置
5.契約が解除されたとき、その後の契約内容に関する変更
6.旅行業者に損害賠償が発生することが明らかな場合
・変更補償金を支払った後に旅行業者の損害賠償責任が明らかになったときは、旅行業者は、変更保証金を返還することになる(形式上)。 ただし、実際は既にに受け取った変更補償金と損害賠償金を相殺して差額を支払う。
例)損害賠償金が8.000円で既に受け取った変更補償金が3.000円の場合、旅行業者は、残りの5.000円を支払うことにより相殺が完了する。

 

最後に、変更補償金の支払いについてみていきましょう。

変更補償金の支払い
1.旅行終了日の翌日から起算して30日以内
・「旅行開始前」に旅行者が契約を解除した場合、変更保証金は支払われない(旅行者は、取消料を支払うことなく、旅行契約を解除することができる)
※「旅行契約の変更」の旅行代金の「払戻し」は「契約書面に記載した旅行終了日の翌日から起算して30日以内」であることに注意。
2.旅行者1名に対して1募集型企画旅行につき、旅行代金に15%以上の率を乗じた額を限度
・旅行業者は15%以上の率で変更保証金の支払い限度額を設定する(15%でも良い)
例)
旅行代金が5万円の場合、旅行開始前に日程が変更(1.5%)、開始後に観光地が変更(2%)、ツアータイトル中に記載があった事実が変更(5%)⇨合計8.5%なので、変更補償金は4.250円。
変更補償金の上限を15%と設定した場合、旅行代金5万円の15%(7.500円)が上限なので、この場合は満額の4.250円が支払われる。
3.変更補償金の合計が1.000円未満のときは支払わない。(原則)
特約により、1.000円未満でも支払われる契約を結ぶことができる。
4.オーバーブッキングのときも変更保証金は支払われる

 

以上、損害賠償(責任)と旅程補償(変更補償金)について学習してきましたが、変更補償金の支払いに関しては確認テストを使ってしっかりと準備していきましょう。

確認テスト 目次

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