旅行業法「登録」




前項「定義」で「旅行業とは」と「旅行業の種類」について解説しましたが、この項では「旅行業とは」の中の「事業としていること(登録制度)」について解説していきます。旅行業等を営むためには、旅行業等の「登録」を受けなければなりません。

旅行業等の登録

旅行業者等の登録をする行政庁は、第1種旅行業だけが「観光庁長官」で、その他は「主たる営業所を管轄する都道府県知事」です。

種別 登録行政庁
第1種旅行業 観光庁長官
第2種旅行業 主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事
第3種旅行業
地域限定旅行業
旅行業者代理業
旅行サービス手配業

 

旅行業等の種別により、以下のように取扱う業務の範囲が決められています。

旅行業の業務範囲

 
 
募集型企画旅行 受注型企画旅行 手配旅行 受託販売(※1) 渡航 相談
海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 国内 海外 海外 国内
第1種
第2種
第3種
地域限定
代理業者 所属旅行業者の代理業務のみ
 営業区域が制限される
  • 自らの営業所のある市町村及び隣接する市町村
  • 観光庁長官の定める区域
受託販売※1

他の旅行会社が実施する募集型企画旅行については、「種別」に関係なく本邦外・内のいずれの企画旅行であっても、受託業者となることができる。

ex. 第1種旅行業者が、地域限定旅行業者の実施する国内旅行について受託販売する。

 

「登録」を受けて旅行業を営む場合、いくつかクリアしなければならない申請事項があります。登録行政庁はこれらの事項を精査して、登録の実施または拒否をします。以下が登録の拒否事由の11項目です。

登録の拒否事由

  1. 旅行業の登録を取り消され、その日から5年を経過していない者
  2. 禁錮以上の刑または旅行業法に違反して罰金刑を受け、刑の執行を終えまたは受けることがなくなって5年を経過していない者
  3. 暴力団員等(暴力団員でなくなってから5年を経過しない者)
  4. 申請前5年以内に旅行業法に関して不正な行為をした者
  5. 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者(未婚)その法定代理人が1~4または7に該当する者
  6. 心身の故障により業務を適正に行うことができない、または破産者復権を得ない者
  7. 法人であって、その役員のうちに1~4または6に該当する者がある者
  8. 暴力団員等がその事業活動を支配する者
  9. 営業所ごとに旅行業務取扱管理者(旅行サービス手配業務取扱管理者)を確実に選任すると認められない者
  10. 旅行業を営もうとする者で、一定の財産的基礎を有しない者
  11. 旅行業者代理業者を営もうとする者で、その代理する旅行業者が2社以上ある者

4.「旅行業法に関して不正な行為をした者」で注意が必要なのは、あくまで「旅行業法」で不正な行為をした者ということです。「一般の法律」と「旅行業法」で拒否事由の違いを確認しましょう。

刑罰 一般の法律 旅行業法
懲役 該当する 該当する
禁錮 該当する
罰金 該当しない 該当する
科料 該当しない 該当しない

※「交通違反の罰金」は拒否事由に該当しないので登録申請が可能です。

10.「旅行業を営もうとする者で、一定の財産的基礎を有しない者」は、旅行業の登録を拒否されます。旅行業を営もうとする者は、当然ながら一定の財産を有していなければ旅行会社を運営していくことが出来ません。ここで言う「財産」とは、この後の項で学習する「営業保証金」とは別に旅行業者が確保しなければならない財産のことで、「財産的基礎(資本金)」といいます。

財産的基礎
第1種 3,000万円以上
第2種 700万円以上
第3種 300万円以上
地域限定 100万円以上
旅行業者代理業 規定なし(旅行業ではないため)

 

登録事項、登録申請から営業開始までは以下のとおりです。「旅行業務取扱管理者の選任」と「営業開始時期」はよく試験に出題されますので、確実に覚えましょう。

登録事項

  1. 氏名・名称・住所・法人の場合は代表者の氏名
  2. 主たる営業所その他の営業所の名称・所在地
  3. 業務範囲
  4. 旅行業者であって代理業者を持つ場合は、その代理業者の氏名・名称・所在地
  5. 代理業者は、所属旅行者の氏名・名称・所在地

※「旅行業務取扱管理者の選任」に関する規定は、登録申請事項に含まれていないことに注意しましょう。

登録申請から事業開始まで

  1. 登録行政庁に申請書を提出
  2. 登録通知が届く
  3. 主たる営業所最寄りの供託所に営業保証金を供託する
  4. 登録通知後、14日以内に供託書の写しを登録行政庁に出る
  5. ⇨事業開始

※事業開始時期はよく試験に出題されるので、しっかりと覚えましょう。

 

事業開始後の登録内容の変更は以下のとおりです。「届出」と「申請」の2つの方法があります。変更の登録・申請は登録申請と同様に「主たる営業所の所在地」の登録行政庁に行います。(住所変更は変更後の主たる営業所の所在地)

変更方法

  • 届出:変更後30日以内に登録行政庁に届出
  • 申請:事前に登録行政庁に申請

※「届出」は事後、「申請」は事前に行います。

届出と申請

登録事項内容の変更に伴い、「届出」と「申請」の2つの方法により登録内容の変更を行います。

  1. 氏名・名称・住所・法人の場合は代表者の氏名(届出)
  2. 営業所の名称・所在地(届出)
  3. 業務範囲の変更(申請
  4. 旅行業者であって代理業者を持つ場合、その氏名・名称・所在地(届出)
  5. 代理業者は、所属旅行業者の氏名・名称・所在地が変わったとき(申請

5.「代理業者」については、この後の項「旅行業者代理業」で詳しく説明しますが、旅行業者については、「業務範囲の変更」だけが「申請」です。業務内容の変更は非常に重要な事項(財産的基礎、営業保証金など)であるため、事前の申請が必要になります。

 

最後に、登録の更新についてまとめました。試験でよく問われるのは、「有効期間満了日」です。

登録の更新

  • (新規の)有効期間は(登録の日から起算して)5年間(※代理業者に有効期間はない)
  • 更新する場合は、有効期間満了の2カ月前までに申請する
  • (更新された)有効期間は、前回の登録満了日の翌日から起算される(始まる)
  • 登録満了日までに更新の可否が来ない場合、可否の通知があるまでは、従前の登録は有効
  • 登録満了日以降に更新が認められた場合、本来満了日だった日の翌日から有効期間が起算される(始まる)

ex. 満了日が平成30年9月1日で更新通知が10月1日が届いた場合、有効期間は平成30年9月2日から始まり、平成35年9月1日が満了日になる。

確認テスト 目次

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